息子がユースセレクションに挑戦した(2)

暑く暑く、長い長い夏はまだ始まったばかりだった。

ガンバのセレクションの翌日。神奈川のJクラブのユースセレクションである。平日でもあり、時間は夜。私は仕事を終えてから会場に駆けつけた。
ほぼ地元に帰って来て、知った顔もいるであろうセレクションである。ガンバのときとは少し勝手が違う。昼間、わたしに本人のやや不安な気持ちを綴ったメールが来た。わたしは、とにかく自信を持てと、気持ちの持ちようでずいぶんプレーが変わる奴だと見切り、そんな内容のメールを返した。事実、ガンバの時には周囲に知ってる奴が一人もいないからこそ、のびのびとプレーできたという要因があったようだ。彼の不安は、所属チームの実力や地域の選抜や県の選抜に選ばれていない自分のサッカー歴から来るものだと思われた。地元のセレクションではそういうことを知っている奴らも一緒に受ける。自分は格下であるという意識なんだろうと思われた。しかし、前日のプレーを見る限りそこそこやれるではないかと思ったのも事実なので、自信を持てと発破をかけた。
わたしは、やや時間に遅れて到着。すでにゲームがはじまっていた。ハーフコート、ゴールは小学生用、8vs8のゲームらしかった。何チームに編成されていたのかよくわからなかったが、数ゲーム終了後しばらくしてその場で一次選考の結果が発表されたようで、半分以上の子が落ちたらしく帰路につく準備をしている。息子はどうやら残ったようだ。
で、このJクラブのジュニアユースの子達がここから合流して二次選考になるようであった。フルコートの11vs11のゲームである。後で聞いたのだがポジションは指定されたらしい。11人のチームが4チーム編成されて、15分ほどのゲームを都合3ゲーム行う。
息子はサイドバックとトップをやっていた。が、この日は前日と違いなにか冴えなかった。やはり、フルコートになるとメッキがはがれるのか、という感じもしないでもなかった。所属チームでのプレーに比べると格段にいいのだが、ガンバでのプレーを見ていたのでなにか少し物足りず、体力的にもバテていたようだ。実際前段でやったハーフコートゲームではプレーにもキレがあり、イニシアチブを取る場面もありそこそこ良かったのだが、フルコートではそういうプレーが影を潜めた感じがした。
この日はここまでで、結果は通知が来るということだった。息子はまた終了後コーチになにやら質問をしていた。このコーチは彼のことを小学生の頃から知っているコーチではあったが…。自分には何が足りないのか、というようなことを質問したらしい。コーチの答えはともかく、その話の中で、上手い奴はたくさんいる、そのなかで光るものを持っている奴が選ばれるんだ、というようなことがあったらしい。これを聞いてかれはかなり自信喪失したらしく、自分は落ちたな、と思ったらしい。
ガンバのときと大違いで、浮き沈みの激しい二日間だった。

実際、後日通知が来たが、残念ながら落選であった。

あとで、この考えは覆されることになるのだが、そもそもこのようなセレクションではコーチ陣は申し込んできた選手たちについて、なんらかカテゴリー分けしたリストを作っているのだと思う。地元の子達ならある程度日々の大会や練習ゲームで目星をつけているだろうし、そうでなくとも他クラブのコーチと連絡を取り、子供達についての情報交換はなされているはずだと思う。そうでないと、たかだか10分程度のゲームを何回かやっただけで100人近い選手の中からその場で合否を決めるなんて芸当はまずできないと思う。それに、今回はフルコートのゲームになった時にポジションが指定されている。何らかのスカウティングがあり、そうなっているのが感じられた。
小6時、あるクラブのジュニアユースのセレクションを受けたとき、4分の1のコートで7vs7のゲームをひたすら行うという方法だったのだが、こんな方法で子供のどこを見ているだろうと非常に疑問を抱いたものだ。(しかも、3回くらいセレクションを開催しているのだ)そのとき確信をもった。やる前からかなりの程度合格者は決められているんだろうと。
それは、ガンバでもこのクラブでも同じなんだろうと…。息子はこのクラブではコーチのリストに載っていたんだろうとは思う。しかし、それ以上にはいけなかったということだろう。息子には言わないが…。

(続く)