ムラサワレター

環境問題について調べ始めた頃。といっても7〜8年ほど前のことだが、iPodなるものを衝動買いした。2代目のシャッフルだったかな。iTunesと同期させて音楽を聴くわけだが、高校卒業時に発売されたSONYウォークマンをバイト代をはたいてやっと買ったことを思い出したりもした。時代は変わったもんでポッドキャストなるものが配信されているのをここで発見した。それまで名前は聞いたことはあるけど、ラジオみたいなもんだろうというくらいの認識だった。
iTunesでいろいろ見ているとラジオ番組もあるけれど、なにやら個人で配信しているような番組もあったり落語もあったりで異常におもしろかった。そんな中で、ムラサワレターを見つけた。
当時、環境問題といえば地球温暖化が定番になっていたこともあり、この番組のバックナンバーを片っ端に聴き始めた。現在は温暖化に関してはやや懐疑的な気持ちを持っているが、この番組を聴いているとCO2排出を軽減することについてかなり希望が持てるのではないかと思った。
環境問題はほぼイコールエネルギー問題であるから、電力に関しては原子力発電についても興味を持って調べてはいた。以前にも書いたが、原子力発電について調べていくにつれてなにか暗い気分になっていったことを思い出す。安全だと強弁されてきたことはあまり知らなかったが、「軽微な」事故は今までにいくつもあり、さらにそれを隠蔽してきたらしいことは知っていた。それでも、なんとなく、つつがなく発電は行われているのだろう、くらいの意識であった。しかし使用済み燃料(高レベル放射性廃棄物)の(低レベルもだが)最終処分の計画を知るにつけ、私の原子力発電に対する考えはほぼ固まった。
こいつはダメだ。
環境問題の中にはごみ(廃棄物)問題もふくまれるであろう。
自分の自治体の一般廃棄物の最終処分地を知って暮らしている人がどれくらいいるだろうか?また、すでに運用が終わった旧最終処分地がどこにあり、現在どうなっているかを知って暮らしている人がどれくらいいるだろうか?東京の夢の島や多摩の奥地(失礼な表現だが)のそれがニュースになったことはあるが…
ごみや下水の処理は一般の市民にとっては決まりに従って「出したら終わり」なのではないか?自治体の言うことにしたがってきれいに分別してごみステーションに出す。しかし、その先のことはほとんどの人は考えない。「汚い」ものは速やかに「処分」されるのが当たり前であり、自治体が法を遵守してやればやるほど最終処分は我々にとって縁遠いものになっている。
おそらく、放射性廃棄物もそうなると思う。
一般廃棄物の最終処分地の周辺では重金属やその他の有害物質が漏れ出している証拠があるらしいが、あまり話題にはならない。
高レベル放射性廃棄物地層処分は、科学の粋をあつめて処理した頑丈なドラム缶を地下深くに埋め、その後何百年も管理する、という方法だ。科学の粋を集めたって気の遠くなるような月日管理しなくてはならない代物であるが、多分間違いなく、忘れ去られると思う。
使用済み燃料は処分方法や処分地が計画段階でもあり、各原子力発電所に相当貯められているし、これからもたまり続ける。六ヶ所村で中間処理しようがプルサーマルをやろうが高速増殖炉をやろうがなくなりはしない。
尾篭な話だが、田んぼの隅に肥溜めを作っておくのとはわけが違う。

原子力発電所については、それが各地に建てられるときの経緯についても多少調べたが、立地地域にとっては毒饅頭以外の何者でもない。推進しようとする人にとっては金のなる木だったのだろうが…
ほぼ例外なく、貧しい寒村に札束で頬をひっぱたくようなようなやり方で立地が進められてきて、我々はその上に座って豊かな電力を享受してきたわけだ。地元には雇用も生んだし立派な箱物もできたのだろうが、一定期間経つとそれもジリ貧、あらたな原発を誘致しないとやっていけなくなるような仕組みになっている。廃炉なんてことになったら元の寒村に戻ってしまう。大事故になったら……福島で起きているとおりだ。
一度受け入れたら…まさに毒饅頭。地元で反原発なんてことは言えなくなる。
こいつ(原発)はもう完全にダメダメだと思った。
今回の福島の事故は、ほんとになんてことしてくれたんだ!!って思う。でもね、電力を消費してきた私達はその片棒を担いできたんだという自覚も一方では持つべきなんだろうと思う。日本の中での南北問題なのかもしれませんぜってこと。
原発wikipedia:NIMBYの最たるもの。リスクが高いから都市部にはおけない。なにかあっても被害の少ない僻地におくべきでそれが経済的な合理性だ、という論を述べる人がいるが、冷血人間かと思う。都市部が潤うためには辺境にリスクをということだ。こういう人は、先進国の貨幣経済が入り込むことでどんどん貧しくなり飢餓状態になる開発途上国のことなど、すなわち自分以外の人の命のことなど考えられないのだろう。先進国が潤うためには土地に合わない換金作物を生産させ土地自体を疲弊させやがて荒廃してもおかまいなし。あるいは、土地を占有し地元の労働力を搾取し続ける先進国大資本会社と同じ思考。

こんなことを書くつもりじゃなかったんだけど…

ムラサワレターは環境問題ってやつを調べていくうち絶望的になる私をかなり勇気づけてくれたのである。村沢先生がんばって。と、ポッドキャストの再会を訴えたかったんだほんとは。